ひな祭りには、白酒。
昔は、桃が百歳を表す
「百歳(ももとせ)」に通じることから
桃の花を酒に浸した
「桃花酒(とうかしゅ)」を飲む風習がありました。
白酒が
雛祭りのお供えとなったのは江戸時代からです。
白酒、は、お酒です。
お米のリキュール酒です。
アルコール度は10%前後
甘みが強いのですが
酒税法上ではリキュールに該当します。
白酒は
一般的な製法として
蒸したもち米に
同量以上の味醂(みりん)を加えてかき混ぜるか
蒸したもち米に
焼酎と米麹を加えるなどして仕込んでおいたものを
約1ヶ月間熟成させた後に
臼ですりつぶして作られたもの。
白酒は
博多地方において古くから造られていた
「練酒」が起源であると伝えられてます。
平安時代からの風習である
上巳(桃の節句)で
室町時代から
桃の花を浸したお酒を飲んでいたものが
変化したものと伝えられています。
また、庶民に広まったのは
17世紀に江戸で活躍した
実業家の豊島屋(としまや)十右衛門
だとする説もあります。
『江戸名所図会』にも
「鎌倉町豊島屋酒店 白酒を商う図」
として紹介されていて
ひな祭りの時期になると
白酒を求める人が
夜明けから店の前に並んでいたそうです。
今でも
「豊島屋の白酒」は
豊島屋酒造が販売し
味わうことができます。
白酒の紐の如くにつがれけり – 高浜虚子
「白酒」には読み方が3つあります。
「しろざけ」ひな祭りなどでの甘みの強いお酒
「しろき」神事に供されるお酒。
「はくしゅ」どぶろくなどの呼び方。
別のもので
中国のお酒の「白酒(パイチュウ)」とは
アルコール度数が38度から45度の蒸留酒。
コーリャン(高梁)、トウモロコシ、ジャガイモ
サツマイモなどの穀物が原料のもの。
透明なお酒。「白」は透明という意味だそうです。
「白酒」と「甘酒」を混同している人が多いようです。
白酒はお酒ですので
家庭では作れません。
「家で作って……」というのは
甘酒と勘違いしていると思われます。
甘酒は
ご飯やお粥に米麹を混ぜて
一昼夜 55度前後で保温し
デンプンから甘い糖分を引き出したもの。
この方法では
アルコール度数1%未満です。
ですので甘酒はお酒には該当しません。
お子様でも安心です。
一晩でできるので
「一夜酒(ひとよざけ)」とも呼ばれています。
昔から家庭での手作りの飲み物として
親しまれていますから
ひな祭りの飲み物としても
取り入れる方が多いと思います。
また
酒粕に砂糖、水、しょうがを加えて作った
「甘酒」と呼ばれるものもあります。
こちらはアルコールを含んでいます。
甘酒は
暖めて飲む冬の飲み物のイメージが強いのですが
実は、夏の季語です。
江戸時代には
夏に甘酒売りが
氷で冷しながら甘酒を売っていたそうです。
栄養があるので
夏バテ防止にと庶民に親しまれていました。
桃の花を日本酒に浸したのが
「桃花酒(とうかしゅ)」。
桃は 長寿を表す
百歳(ももとせ)に通じることから
諸病を取り払い
顔色も美しく、麗しくすると
言われています。
古代中国の故事で
桃の花が流れる川の水(桃花水)を飲んだら
300歳の長寿を得られたとありましたので
平安の貴族たちは
それにあやかって
3月3日に曲水の宴を催し
桃の花を日本酒の盃に浮かべて
「桃花酒」を飲んでいたということです。
江戸時代に「白酒」が流行るまでは
桃の節句には
「桃花酒」が飲まれていたのです。