日本酒を搾ったあと
通常2回の加熱処理を行います。
この作業が
「火入れ」です。
搾ったお酒を加熱して
火落菌(ひおちきん)と呼ばれる
貯蔵中のお酒を白く濁らせて
味の劣化を招く恐れのある
乳酸菌の一種を殺菌すること。
そして
お酒の熟成を進み易くしてしまう
酵素の働きを止めるためです。
火落ち とは
お酒に「火落菌」と言われる
特殊な乳酸菌が繁殖することです。
そうなると、お酒は白濁し
一般に、酸が生成
特異臭(火落臭)の発生を伴い
飲用にたえなくなります。
菌の種類により
それらの程度は異なります。
酸は生成するが
香りの変化の少ない場合や
酸の生成は少ないが
香りの変化が激しい等
さまざまな様相を示します。
大多数の市販酒は
アルコール度数が15%程度なので
このアルコール濃度中では
一般の細菌は生育できませんが
「火落菌」は
アルコール耐性が強く
お酒の中で容易に増殖します。
その生育最適温度は
28℃~30℃です。
日本酒は「生きて」います。
醪(もろみ)を搾ったあとでも
お酒の中に残っている酵素は
アルコール発酵を続けているのです。
ですので、そのままでは
瓶に詰めた後でも
発酵、品質の変化が続くため
飲み手へ届くころには
美味しい飲み頃を過ぎてしまいます。
この酵素の働きを止めるため
搾った直後と
出荷前に
2回の加熱処理
「火入れ」を行います。
火入れをすることで
お酒の味が落ち着き安定します。
お酒の中の
アミラーゼや
プロテアーゼなどの
残存酵素を失活させることで
お酒の保存性が高まります。
また
火入れ後貯蔵することで
新酒独特の荒々しさ等が消えて
貯蔵中の温度管理と併せて
熟度を調節し
香味を整えることができます。
火入れを行わないお酒を
「生酒」と呼びます。
生貯蔵酒や生詰酒と呼ばれるお酒は
生酒でなく
搾ってから出荷までの流れの中で
それぞれどこかのタイミングで
一度火入れを行ったお酒です。
・生酒
加熱無し
常温保存はできない。
・生貯蔵酒
加熱無しで貯蔵 出荷前加熱
春から夏にかけて出回る。
・生詰酒
貯蔵前に加熱 出荷前加熱なし
タンク貯蔵前に一度だけ火入れをして
そのまま熟成させる。
※ひやおろし
春から夏にかけて熟成し
秋に出荷される生詰酒。
1年で最も美味しいと言われる。
・通常のお酒
貯蔵前、出荷前、それぞれ加熱
「火入れ」は
「蛇管(じゃがん)」と呼ばれる
熱交換器を使用し
温度を60℃ ~ 65℃ 位に保った管の中に
お酒を通して、その後急冷する
加熱殺菌が一般的です。
また
お酒を瓶に入れ
湯煎殺菌を行う
「瓶燗火入れ」も
近年
取り入れる蔵元も増えてきました。
手作業で手間もかかりますが
お酒の劣化を出来る限り防ぎ
お酒本来の味わいを楽しめるという
利点があります。
現代のお酒は
搾った直後に
なるべく早く
火入れをしなければいけない
よりデリケートなお酒と
なっています。
火入れは
「なるべく早め」
が基本なのです。