日本酒の雑学 ・美味しいお酒造りの神様 松尾大社(京都市右京区)

2020.01.15

昔から日本には
毎年秋に、その年に採れたお米や野菜
そのお米で作ったお酒などを
神様へ供えて感謝のお祭りを行い
お祭りに参加した全員が
神様に捧げた供物を食す
という文化がありました。
この、神様と人々が共に食事をし
神様に捧げた「御神酒」をいただくという
「神人共食」と言われるもので
人々は神様の力を分けて頂けて
神様に近づくことができる
とされてきました。
 
松尾大社は
701年(大宝元年)に創建された
京都の中でも最古の神社の一つです。
松尾大社本殿の背後にある松尾山は
山頂近くに「磐座(いわくら)」と呼ばれる
神が降臨するという大岩があり
この地の人々が
山の神として信仰してきました。
京都盆地の西一帯を支配していた
「秦」一族の
「秦忌寸都理(はたのいみきとり)」が
「磐座」の神霊を勧請し建立しました。
 
ご祭神は
山の神とされる
大山咋神(おおやまぐいのかみ)と
弁天様としても知られている
中津島姫命(なかつしまひめのみこと)
別名、市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)。
福岡県の宗像大社に祀られる三女神の一神です。
 
秦一族とは
伏見稲荷大社や平安京の創建にも携わった
「技術者集団」として名高い渡来人です。
 
平安時代には
御神酒(おみき)を専門に作る
「神酒司(みきのつかさ)」という
朝廷の役職がありました。
当時は
「政(まつりごと)」= 政治というものは
神様を「お祀り」することが一番重要な仕事で
神様に献上するため
朝廷では一年中お酒を造っていました。

その後武士の時代へ移ると
お酒造りも
寺院や民間の酒屋で造られるようになりました。
なかでも
「僧坊酒(そうぼうしゅ)」と言って
中国で最先端の技術を学んできた
僧侶たちが作るお酒が美味しく
寺院の多い京都が
美味しいお酒の一大産地となりました。
当時の京都には、「僧坊酒」を作る寺院や
民間の造り酒屋をあわせると
300軒程の数があり
その職人の多くは秦一族と云われています。
美味しいお酒を作る秦一族の総氏神が
松尾大社なので
いつからか山の神である松尾山の神様が
美味しいお酒造りの神様にもなったと言われます。
 
江戸時代中期辺りになると
関西のお酒は珍重されて
江戸幕府への貢物のお酒を送る「樽廻船」や
「菱垣(ひがき)廻船」などの
全国的な輸送ネットワークも
出来上がったことで
京都などからの美味しいお酒とともに
松尾大社の神様が
「美味しいお酒造りの神様」として
全国的に有名になっていきました。
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