日本酒の起源は
九州・近畿などの西日本ではと言う説があります。
その中で
「大隅国風土記」(713年以降)
(大隅国:現在の鹿児島県の
大隅半島を中心とする東半部)
の 逸文には
お酒を造ることを
「噛む(かむ)」というとあります。
大隅国では
水とお米を決められた家に準備して
村中に告げ回り男女を集め
その家に集まってお米を噛み
「酒船(酒専用の容器)」に吐き入れ
何日か後
お酒の香がしてきたころに再び集まり
噛んで吐き入れた者たちが飲む
これを「口噛みの酒」と呼ぶ
とあります。
この「お酒」の記述が
お米を原料としたお酒の
最古の形ではと考えられています。
加熱したお米を
口の中でよく噛んで
唾液中の「アミラーゼ」と言う酵素で
デンプンを糖化し
野生酵母によって
糖が発酵して
アルコールが生成されるものです。
日本酒は
神様のために造られ始めたといわれます。
ですので
「口噛み」を行うのは
神社の巫女のみに限られていました。
巫女が口の中で醸すお酒は
とても神聖なものだったと考えられます。
この「口噛みのお酒」に関連するもので
『古事記』に登場する
アマテラスとスサノオの神話では
互いの持ち物を噛んで吐き出し
互いが神の子を生む
というシーンがあります。
アマテラスが
スサノオの持つ十拳剣(とつかのつるぎ)を折り
天の真名井(まない)の水とともに
こまめに噛んで吐き出しますと
三つ柱の女神様が生まれます。
この三人の女神様は
「宗像(むなかた)三女神」と呼ばれる
多紀理比売(たぎりひめ)
市寸島比売(いちきしまひめ)
多岐津比売(たきつひめ) で
九州北部の島や
宇佐神宮などで信仰されている
海洋・航海の女神様であり
同時にお酒の女神様ともいわれます。
「かみさん」の語源
旅館の女主人の事を
「お女将(おかみ)さん」と言ったり
奥さんの事を
「うちのかみさん」とか言います。
女の人の事を「かみ」さんと言うのは
「噛み」さんから来ているといいます。
「お女将さん」と言う呼び方は
女性が
神様に捧げる
神聖なお酒造りにかかわっていたことの
名残であると考えられます。
ちなみに
酒税法上では
アルコール度数が1度以上の飲料は
「酒類」に分類されます。
申請しての許可を受けずに酒類を製造するのは
「酒税法違反」になります。
ですので
「口噛みの酒」を
自分で、自宅で勝手につくる場合は
お米の糖が発酵して
アルコール度数1度以上となりますから
酒税法違反にあたります。